「ばばちゃんは仙人」 ② 少女のころのばば

 ばばが、ちょうど沙希ちゃんと同じ年の頃のことじゃった。雪がちらちら舞
うておったよ。正月も近づいていて、障子の張り替えをしたり、しめ飾りの
藁を打ったり、昼間の疲れた体に鞭打って遅くまで夜なべする母ちゃんや
父ちゃんのそばで、ばばも毎晩手伝いをしたもんだよ。
 ある日のこと、夕方になっても父ちゃんも母ちゃんも山から帰りが遅いの
で、迎えに行くことにしたばばは、いつもの慣れ知った山道を登って行った
んだよ。まだ十分明るい時間だった。

歌を大きな声で歌いながら、時々
「母ちゃーん」 「父ちゃーん」 と立ち止まっては呼んでみた。
「オーイ」 と父ちゃんの声がこだまのように小さく返ってきた。
 ばばは嬉しくなって、力の限り大股で上へ駆けあがっていこうとしたんだ
がな、それから後のことはちいっとも覚えがないんだがねえ。

 ふと気がついたら、ばばはほら穴のような、トンネルのような、初めて
見る、景色の前に一人で立っていたんだよ。

                 沙希ちゃん 続きはまた明日ね

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