おばあちゃんと一太郎 ①

雨が降る日は、行動範囲の限定もあり、鬱陶しいだけでなんにもいいこと
がないと思いがちだが、一太郎にとっては、待ち焦がれるほど雨降りが楽
しい。
同じ敷地内に祖母の住まいがあり、一太郎が家にいない時は決まってそこ
にいた。祖母は、もう何年も一人で暮らしていて、食事も一人で作るし、風呂
も決して貰い湯などしない。一太郎が泊まりたいと言っても、親の居る家で
寝ろと言う。
天気がいい日は、「お天とう様が呼んでおいでだ」 と外に出るよう促す。

「こんな天気の日に、男が家の中におるんじゃない」 いつもの口癖だ。

「おばあちゃんちでご飯が食べたいな」
 
「家族は揃っておらんと・・・父ちゃんや母ちゃんがお前を忘れてしまいよる」

一太郎は、きつい言葉で言われようと、心優しく、家族を誰よりも大事にする
本当の祖母を知っている。
 どんなに怒られようと、おばあちゃんと居ると、なんだかとても心が大きく膨ら
んできて「男」である自分を再確認できる気がするのだ。

なにげない会話にも、気がつくとたいてい引き込まれている。
おばあちゃんは、ある時は魔法使いのように、ある時は手品師のように、
イリュージョンの世界へ連れてってくれる。
 なんだか、なぜだか、一太郎はおばあちゃんと居るだけで楽しかった。

        

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