猫のつぶやき(宮島は近くて遠い島になった)

画像日本三景の宮島が世界遺産に認定されてから、訪れる客も増えに増え、のんびりと厳島神社に詣でる気もうすれてしまった。

干支の数だけ登った弥山の頂上も、ずいぶん変わったと聴く。初日の出に手を合わせ、帰りの連絡船に乗り込むと、正月三が日が終わったような安堵の心境になったものだ。

最後に登ったのは何年前になるだろうか。
若かったなああの頃はと懐かしく思い出す。冷たい風も、ひと気のない暗い道もなんのその、駅のホームで初詣の臨時便を待つのはたった一人の年が多かった。何を信じ、何を祈願したのだろうか。
それすら定かではないが、宮島口駅に着くと、ただ人の流れに着いて押し出されるほどの集団になっていた。

これだけの人々の初日に求める何かがぶつかり、荘厳な厳島が沈んでしまうのではないかとさえ思ったものである。

ロープウェイを待つ人の長い行列を横目に弥山を目指した。 535 メートルの頂上には、初日の出を待つ群衆で止どまることも出来ず、山を降りかける頃白々と元日の朝が開ける。
山の中腹で初日の出を迎え、ただ手を合す。

13年続いた初詣は、神社で頂いた13本のしゃもじを残しただけで、差したることもなかったが、世界遺産になる前の宮島は、800年の古に戻り、「平家物語」に残る人物を彷彿させてくれた夢の場所であったのかも知れない。

在来線から見る宮島は、近くて遠い島になった。


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