猫のつぶやき(月に行った人)

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心の深くへは決してずかずか入り込むことはなかったけれど、お互いはいつも通じ合い、許し合った。彼女は中秋の名月の夜、すすきを取り損ねて崖から転落し、あっという間にこの世から消えてしまった。

彼女は『月』 がよく似合った人だった。今夜は雲間からそのまんまるい月が顔を出した。


「また会えたね、どおそっちは あちこちの国が月へ探査機を打ち上げているから、そのうちきっと騒々しくなるでしょうね」


「そのうちね 」


「あまりに 急ぎすぎたね もっとこっちにいるべきだったよね」


毎年こんな何気ない話をするのだが、9月の月はあまりに美しく、それでいてもの悲しく、あっちとこっちを繋いでいる。

そよとして優しく、凛として厳しく、盛り上がる会話は決して裏切りのない深く積み上げた真実があった。


満月の夜に、まるで月に誘われるように、彼女は月の人になったのだと思う。



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