テーマ:自称作家と言う青年

「懐かしき人達」 ②-8 自称作家と言う青年

 長田の死は意外であった 何故? 何故? 彼を知る者は、初めてその存在を振り返った。 「時間があれば、小説を書いています」と言っていた彼が、広い部屋の片隅で 川のせせらぎを聞きながら、川風の音を楽しみながら、原稿用紙に向かって 何を書きたかったのだろう。何を主張しようとしたのだろう。  年老いた母親とのつつましい暮らしぶりが、…
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「懐かしき人達」 ②-7 自称作家と言う青年

 なんとか同人雑誌の創刊号にこぎつけることができた。だがそれは内部の もめ事により、次号を見ぬまま解散してしまった。ものを書く人達の強い個性 は、協調の精神が薄く、自己主張の強すぎる我儘者でしかないと、少々落胆 もしたが、書きたければ、何も集団になる必要もないではないかとも思った。  光陰矢のごとし。 月日はめぐり、パ…
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「懐かしき人達」 ②-6自称作家と言う青年

 自分の将来には、文学への道だけが鮮やかに可能性を秘めているかのように 思っていた。はちきれんばかりの若さに張り付いた夢の重みは、どんな苦境にたって いようとも、揺るぎない支えでもあった。    ある日、忘れていた (長田 健)から手紙が来た。同人雑誌会員の呼び掛け であった。相手の目を見て話すこともぎこちないあの人が、どう…
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懐かしき人達 ②-5 自称作家と言う青年

 それから数日後、分厚い茶封筒が届いた。裏にはやはり (作家 長田 健) と記してあった。幼い字であるが、堂々と自分を作家とうたうからには、それな りの作品であろうと期待し想像も膨らんだが、見事に打ち破られた。  こんなものを作品と言えるのだろうか。どんな感想を伝えればいいのか。 正直に、率直に、自分の感想を伝えることは、大…
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「なつかしき人達」 ②ー4 自称作家と言う青年

 時は昼食の時刻であった。二人の前に食膳が並べられたが、あまりのみす ぼらしさに愕然とした。だが反面、貧乏の共有が二人の堅苦しさを解きほぐし てくれた。和らいだ空気にわずかな笑いも出るほどになった。 「ゆっくりしていってください」 歯の抜けた口元に手をあてがいながら、母親 は嬉しそうに静かに笑った。 身なりは質素であるが、出自の…
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懐かしき人達 ②ー3 自称・作家と言う青年

駅からの30分はとても長く感じた。黙々と歩き続ける二人の様は、奇妙な 光景であったろう。 白い帽子の縁を何度もいじったりしながら,、彼の顔の表情や古ぼけた靴、 やけにだぶついた洋服やズボンなど、一瞬のうちに観察をした。 想像からかけ離れたその存在に、「あまり期待しないほうがいいのでは」 という母の言葉をかみしめるのでした…
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懐かしき人達 ②ー2 自称作家と言う青年

 会って話がしてみたい。作家と言うからにはきっと素晴らしい人だろう 作家の肖像を思い描き、高揚感あふれるままその日を待ちわびた。 夏休みのその日がついに来た。「あまり期待しないほうがいいのでは」 と母は不安気な顔をした。好奇心は最高潮に達し、もう止まることはな かった。 目的の駅は閑散としていて、列車を降りたのは2~3人だ…
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