猫のつぶやき(心の里帰り)

画像午後3時を過ぎたばかりの銀行で、ATMを前にして一人の女性に声をかけられ振り返ると

「この機械でお金おろせますよね」

通帳を袋から出して見せた。その見ず知らずの彼女は、ATMを初めて使うのでとても怖いと言いながら、その表情には不安の色は微塵もなく、たまたま遭遇した私が同年輩と見込んでか、次々と話しかけ問いかけ、やがては時代に置き去りにされる老婆の愚痴や、果ては嫁のあれこれまでになり、私を困惑させた。

これが老いていく孤独なのだとも感じ、理性や知性のネジが少しずつ緩み、ただ我が身の輝いた時代へ心の里帰りすることでしか自分の存在感を見出せないのか。

何度も同じことを聞かされる内に、「呆け老人」 という実態に触れた気がした。

他人事ではないのだ。それは背中を走り抜ける⁻強い衝撃であった。

結局、彼女はATMを使ったのか使わなかったのか。帰宅後に何か揉め事はなかっただろうか。
老いていく者が共通して求めるものは、優しさ、それだけなのだ。 必ず自分も通る道を、今不安と戦いながら先を歩いているのだ。

      来た道、行く道。  誰もが通る道。


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