猫のつぶやき(図書館)

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こもれびを追いかけるようにして席をかわり、雲の流れが止まりやっと今日の指定席を確保した。ガラス越しに見る図書館の周囲は、いつも見慣れた単調な風景だが、どこかしっとりとした懐かしさを感じる。

精神の集中が為せるせいか、街の喧騒を鮮やかに洗い落し、自分だけの思考の「場」であり「時」であることに、この上ない喜びを痛感する。


ぽつぽつと人の気配はあるものの、呼吸一つ残らず消えていく静寂は、正に別天の境地である。

しばらくすると、小さな咳や新聞をめくる乾いた音が、僅かずつ不快を積み上げていく。人の世界であることにあらためてほっとし、また少々落胆もする。

一生をかけても読み切れない膨大な書物の中から、 今日の自分に何を選んでやるのか、この手とこの頭との連携はどうなっているのかと、一瞬走る目まぐるしい感情もやがて治まると、一冊をしっかり抱えて席にもどる。 そして没頭の時間が始まる。


戦後の小学校にあっても、ささやかな図書室があり、誰に言われるまでもなく皆んな本を大事にしていた。同じ本を何度も読みながら次に入る本を楽しみにしたものだった。

豊満の現代、一度も人の目に止まることもなくじっと本棚に眠る書籍が哀れを誘う。


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